昭和生まれの上司が「令和の上司」に進化するための考え方

ふつうの会議は、プレゼンが上手な人の独壇場です。

そしてふつうの上司は、無意識にも、プレゼンの上手さや熱意みたいなものを部下に求めがちです。

でもよく考えると、プレゼンが上手なこととアイデアが良いことは、イコールではありません。

それどころか、プレゼンの声が大きすぎると、静かだけど良いアイデアの声は、聞こえて来なくなってしまうものです。

本当に良いアイデアが欲しい場合は、これまで大多数だった声が小さい人のアイデアを100%引き出すことが、よく考えてみると合理的です。

 

 

全体を良くしたいことと誰かが個人的な利益を上げたい欲望も、分けて考える必要があります。

少し話が逸れますが、それは政治もそうで、たとえば原発の話がまともな議論になりにくいのは、反対派の声が小さすぎる…、

というか、推進派の声が大き過ぎたからだろうと思います。

片方は原発で利益が出るグループで、もう片方は原発が作られなければ元へ戻れるだけのグループ。

片方は仕事だし、片方は本業の合間に時間を見つけて無理をしてやっている。

そして片方は莫大なコストをかけても(たとえばTVCMをしたり)あとで莫大な利益が出るのだから割に合うし、

片方は予算なんてないし、なにをしても持ち出しになり、どう転んでも損…で、

万が一勝てたとしても環境は元へ戻るだけで、議論のために投入した自分の時間も失われたまま、「利益」はなにもありません。

こういうタイプの議論は、ただ経済的に大きくて強いものが勝っているだけで、実質的に議論にはなっていません。

そして本来政治は、市場原理だけに任せられないこういう議論を、フェアなレベルに戻すためにあるはずです。

が、結局政治は往々にして経済のためだけのツールに成り下がってしまうもので、難しいものです。

 

ただ、政治ではそんな理想は無理でも、会社では可能です。

会社は多数決制ではないので、社長がその気になるだけでできます。

社長は権力をどう使うか?を選べます。

声が大きくてやる気を分かりやすく表現できる人を評価するのは、まあふつうです。

でも、声が小さい人の意見を聞いて、それが良かったなら採用し、その人を分かりやすく評価することもできます。

この場合は、社長が先ほどの話での本来の政治(=小さくても価値のある声の拡声器=バランス)の役割になります。

そうすると、小さな声にも価値があるという文化が社内に育ち、これまでは眠っていた力も含めた100%を発揮する下地が整います。

 

社内での議論では、長期ビジョン側はたいてい不利で、短期策側は基本的に強いものです。

短期策側は1年後の天気ではなく明日の天気を当てるようなもので、数字も出しやすいし、主張するリスクも少ないので、大きな声で自信ありげに言いやすいものです。

でも、それが良いかどうか?は別の話で、短期的な策が長期的な利益を無くすことはよくあると思います。

話すバックグラウンドはみんな違います。

ある人は今期の決算書の話をしているし、ある人は長期的なビジョンの話をしている。

利益の話をする人もいるし、損失の話をする人もいるし、まだ見ぬブランド価値の可能性を探している人もいる。

どれも一理あって、どれも欠かせない。どれも正しい。

それでもやはり一つ注意が必要だと思うのは、そもそも長期ビジョン側は基本的に不利であることを考慮しないと、まともな議論にはならない…ということです。

 

 

これは仕方のないことですが、多くの意見は、要するに自分個人の存在感を勝ち取りたいだけなことが多いものです。

言い方は悪いけれど、長期的な会社の存続なんてどうでもいい自分のエゴが目の前の議論に勝ちたいだけの短期案は、そもそも有利なこともあって、長期的には事業をころしてしまう力を持っています。(例:自分は改良と主張しても消費者からは改悪に見えるタイプの仕事など)

だから上司は、人の主張を動機の部分までさかのぼって聞き分けていく必要があります。

そんなとき、エゴが少なめな意見は貴重です。

そんな意見を活かすことができるようになると、ようやく短期パワーと長期パワーのバランスがとれるようになります。

これまでは、声が大きかったり、もっと深くいくなら生まれながらの気の強さや育ちからくる自己肯定感の高さを備えているなど、多くの条件をクリアしないと発言権はないに等しく、

そういうことすべてを含めて大丈夫な、わずかな「できる人?」しか活躍ができませんでした。

静かだけど理にかなった声や、

立場や空気的に不利な人の声や、

長期的な繁栄のための短期的な欲が少なめのアイデアや、

そういう発想ができる穏やかで控えめな人たちや、

怒られながら育ったから発言するのが怖いだけで実は新しいアイデアを内に秘めた人の声や、

まだなんの形にもなっていないけどなにかの種かもしれない感情や、

あとは自分の中のがんばりではない部分の能力など、

令和は、いろいろな種類の能力をもつみんなが活躍できるグループになった方が、当たり前ですが、楽に戦えます。

 

声が小さい人に「大きな声を出せ」となるのではなく、「小さい声のままでいいんですよ」と言い、

「そこをカバーするのがわたしの仕事なんですよ」「そのためにわたしは権力者なんですよ」と言えたら、それは「令和の上司」の脳です。

ハードルを上げるのではなく、下げるのが、令和の上司の仕事です。

これは綺麗ごとを言いたいのではなく、

ほぼ100%自分のためです。

年をとって動けなくなるほど、権力をそんな新しい方向で活用できると、自分は楽に安全に生活ができるし、

権力だから仕方なく…という感じではなく、意味のある権力として周りに存在を喜ばれ、幸せにもなれるからです。

 

 

 

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