【マインドフルネス】自分の思考を4つに分類するワークで分かること
自分の心を本当の意味で理解するのは、至難の業です。なぜ難しいかというと、自分の脳がそれを隠したがるからです。
ではなぜ隠したがるかというと、弱みを隠して強みを強調したいのは、動物の頃から続く脳の基本的な性質だからで、そんな古い動物的な脳は、自分が弱くなることを恐れる感情でいっぱいです。
自分を理解することができれば、悩みが減ります。そして「悩みを減らしたい」とは、自分にはすでに多くの感情がもう不要だということを見抜いている思考とも言えます。
自分の思考を4つに分類するワークは、自分の脳内活動を「古い感情」と「新しい思考」に分けて捉える助けになってくれ、人生を楽にしてくれます。
自分の思考を4つに分類するワーク
ワークは、瞑想をし、考えていること、頭に浮かんでくることをすべて書き出すことから始めます。まずは15分間くらいでもOKです。
そしてそれを下記の4つへ分類していきます。
1.モンキー
モンキーは動物的な感情です。怒りや恐れ、そしてそこから生まれる競争心など、動物なら普通に使っているような感情がこれに当たります。
2.リトルミー
リトルミーは、モンキーよりももう少し人間風です。同じ怒りや恐れでも、悲しみがベースになっていたりするような感情です。
モンキーとの違いは、そこに「ストーリー」が生まれているところです。たとえば、相手にしてほしい人に無視されたときに頭の中を駆け巡る強い感情を伴なった思考などです。
3.スマートモンキー
分類の中でやっかいなのが、この「スマートモンキー」です。スマートモンキーは、文字どおり「したたかな猿」です。
モンキーとの違いは、そこに猿では不可能なレベルの「思考」が加わることです。たとえば、自分の前に割り込んだ相手を「悪」だと設定し、リスクを減らしながら効率的に反撃しようとするような思考が「スマートモンキー」です。
スマートモンキーは、善悪、正誤、教育、親切、心、愛、罪悪感など、いろいろな論理を持ち出してくるので、これこそが人間の思考!と思えそうで戸惑いますが、見分け方は実は簡単で、「動機(感情)」がモンキーと同じかどうか?というところを観察するだけです。
もちろんスマートモンキー自体はなにも悪いことではなく、ただ生存競争における高度なレベルの思考というだけのことです。ただ例をあげ出すときりがないほど、日々の思考の多く、もしかしたらほとんどが、これに当たると思います。
4.マインドフルネス
マインドフルネスは、1~3とは異なる感情/思考で、なにか動機の出所が違う、どこか不思議な感覚です。
人間が生きていくのに最も必要なのは、1~3までの感情/思考であることは間違いありませんが、このマインドフルネスだけは、単純に勝つことや獲得することを目指しているというわけではない、まだ人間にとってどう使えるのかがよく分かっていない、新しい種類の精神状態/思考と言えます。
たとえば「人を傷つけたくないなあ」と思うのは、そうしないことによって逮捕されないというメリットや、WIN-WIN関係が破たんすると結果的に損をするかもしれないなあというような計算思考とは別に、漠然と「そうしたくないと思うなにか」がありますよね?
また「人に喜んでほしい」という願いも、そうすると感謝されていい気分になれるというメリットや、喜んでいない姿を見るのが怖いという恐れを取り除いたとしても、または自分の手柄であることが相手に知られなかったとしても、やはりなにかが残ります。
ただ分類時の注意点は、これを「人間らしさ」として美化しようとすると、なぜかとたんにスマートモンキーとの区別がつきにくくなってしまうことです。
マインドフルネスについては、「あまり意識して使ってこなかった思考なのでまだよくわからない」「スマートモンキー思考が大きすぎて、その声が聞こえない」と考えるのが適切かもしれません。そして、そう考えることそのものがマインドフルネス思考に近そう…という気がするのは、面白いところです。
わたしの場合の例(昔のメモを思い出して)
わたし自身もこのワークに長年取り組んできました。長年というだけあってここには書ききれませんが、一部思い出して書いてみます。
1.モンキー
- 自分の前に割り込んだ人に腹が立った。
- 初めて会った取引先をなんとなく怖いと感じた。
- 夢中でスポーツをした。楽しかった。
2.リトルミー
- 子供が食べ物をこぼすのを見て心がざわざわした。
- 子供を怒ってしまったあとに罪悪感でいっぱいになった。
- お歳暮のお返しをしなければならないことを思い出してうんざりした。
- 子供に手紙をもらって温かい気持ちになった。
3.スマートモンキー
- 割り込んだ人に対する「あなたが悪い」論理が、いつの間にか頭の中で展開されていた。
- 無理にテンションを上げて「おはよう!」と言ったのは、今思えば部下にやる気を出させるためだった。
- 電車の中で妊婦の女性に席を譲らない男にどうやって譲らせるかを、いつの間にか考えていた。
- あの自己中なやつはモンキーに違いないと思った。笑
- 今日はクライアントとWIN-WINの関係でやれて気持ちがよかった。
4.マインドフルネス
- 今日ふとなんの心配もしていない心地よい瞬間があったのは、もしかしたらこれかも。
- 普段の自分のあらゆる思考の奥にいつも特定の感情があるなあと気づいたのは、これかも。
- 気が付いたことを書き出したり、これを分類しているときの思考は、これかも。
- 4に分類しようとして考え始めると、なぜか3になっていくなあ。
テーマ別にやってみるのも効果的
自分を深く知るには、このワークを時間をかけて何度もやるのが効果的です。
また、生活の種類別に分けてやるのも面白いです。たとえば仕事、育児、人間関係、自分に対しての思考などをテーマ別に、出来事とその出来事への自分の反応をメモし、それをあとから時間をとって分類していくのです。
分類するときはすごく考えますが、それはとても意識的な思考で、これまでの「自動的な感情⇒思考プロセス」とは違うな、と感じます。分類が進むと、これまでの人生で自分を動かしてきた動機が見えてきます。
マインドフルネスだとえらいというようなことではなく、また自分を矯正することが目的でもありません。あくまでも「ありのままの自分の状態」を知ることが目的です。(そういう思考が出てきたときはそれらも分類の対象。これらは3へ分類)
このワークをやってみてわかったこと
これまでは、1と2が感情で、3は理性、だから3が「人間らしさ」と考えてきました。でもこうやって書き出してみると、スマートモンキーはすごく複雑な思考はするけれど、やはり分類としてはモンキー側だよな、という気がしてきます。
わたしがこのワークをやってみて思ったのは、「自分は99.9%猿のころと同じ動機で生きているなあ」ということでした。実際の時間配分もそのくらいかなと思います。でもそれで落ち込むことはなくて、脳の回路がそうなんだからそうなっちゃうよなあと、思考の分類後はなぜかあっさりと受け止めることができました。
そうすると自分の思考の中で変えられるものと変えられないものが理解でき、そうなると「これは怖いけどやってみる価値はあるかな」とか「この恐れはたぶん変わらないだろうな」という風に、自分の選択肢が徐々にはっきりしていきます。
とくに、自分にとって無駄なもの(変えられないものを変えようといたこと)が大量にあったことに気が付くほどに無駄な選択肢を捨てることができて、どんどん気持ちが楽になっていくのがわたしは嬉しかったです。
10数年かけていろいろなパターンを観察してみて分かったことは、パターンは無限かのようにあったけれど、感情の種類は数えるほどしかなかったなあ、ということでした。
このワークは、山ほどあって対処できないと感じていた問題が感情ごとに分類され、散らかっていた心の中がわずか数冊のファイルにまとまっていくような体験になると思います。