わたしにとっての中小企業経営とは

わたしは、地元で6代に渡って続いた大きな商店に生まれました。しかし幼少期のころに祖父の代で一度倒産し、それを盛り返そうとがんばった父もわたしが20代前半のころに倒産しました。そのときにわたしも多額の負債を個人で背負ってしまい、その負債を返済するために大学をやめ起業をしました。

ビジネスを立ち上げた体験は楽しかった半面、商家で育ったことはあまりいい思い出ではなく、家の中はお金などについてのけんかが絶えませんでした。自分も起業したとはいえ、「いつかは会社経営をやめるんだ」と漠然と思いながら経営をしていました。

10年間かかって負債が完済に近づいたとき、ふと、これからは家族生活を中心とした人生を生きたい、と思いました。そこで事業が自動で回る仕組みを作り、社長職をパートナーへ譲り、わたしは神奈川県から長野県へ引越し、育児に専念することにしました。

当初は2年間の予定でしたが、最終的にその期間は6年間になりました。その後、目標だった事業を手放すことに着手しました。売りに出してみると、中小企業が事業を売却する難しさを痛感しましたが、事業を自動化していたことなどが偶然にも功を奏し、2011年に希望額で売却することができました。

 

起業は、初月末から始まった毎月60万円の返済をしながらも1年目で黒字になり、2年目で増資をし有限会社に、そして3年目に再度増資をして株式会社になりました。4年目には自身の年収も2,000万円を超えましたが、倒産しそうになったことも何度かありました。わたしは自分が能力が高い方だとはまったく思っていませんが、業績を上げることにはいつも「生死がかかっているかのように」取り組むので(笑)、集中力という意味では自信があります。ただ人生の幸せとなると、アドレナリンが強すぎてずっと苦手だと感じてきました。

そんなビジネスターミネーターのような、でもほんとは幸せになりたかっただけのわたしが、自分の人生を180度転換させるのは、自分の扱い方という意味でとても難しかったです。事業の拡大をやめて自動化を目指すことや、最終的に売却したことなど、まわりの賛同を得られながら取り組めたことはほとんどありませんでした。でも自分がそういう選択をしてきたことには少しの後悔もなく、本当によく決めれたなあと思います。自分にとっては、当初は想像することすらできなかった穏やかな家族生活を振り返って、そう思います。

 

会社経営も、盲目的に業績アップを目指したりする前に、まずは「自分はどういう人生を送りたいのか?」というところからスタートをしないと、なんのためにやっているのかわからなくなってしまいます。日本の中小企業経営者は全責任を負い、心が休まる時間などありません。しかも欧米の経営者なら当たり前のように目指す、小さな規模での事業売却などの出口オプションも、実質ありません。始めたら最後、一生重圧が続くのです。

わたしが事業を売却する道を探したり代々続いた経営をやめるという選択をしたかったとき、そういうことに前向きなアドバイスをくれた人はいなかったし、ノウハウも見つかりませんでした。「やめる」や「変わる」は一般的にはいいイメージではないとは思います。日本は責任者になってしまうと重圧ばかりでいいことがあまりなく、なかなか幸せになれない国だなあ…と個人的に感じていますが、これからの時代は、心が自由な経営者が一人でも増えたらいいなと心から思います。経営者だけでなく経営者の家族のためにも!

 

仕事に使命のようなものはなくて、幸せに生きるための手段に過ぎない、仕事なんてそんな大したもんでもない、と怒られるかもしれないけどわたしは思っています。欧米ではスポーツやビジネスは「ゲーム」だけど、ぼくら日本人は「生きる道」などと言い、いろいろ犠牲にしながら必死にがんばります。もちろんそれで本当に幸せになれるならいいです。でもわたしが自分のまわりの経営者を幼少期から観察してきて思うのは、難しいのはがんばることよりも「幸せに生きること」のほうかもな、ということです。

社会で成功しても家が不幸ならなんの意味があるの?もしかして順番が逆?そしてなぜ両方手に入れるのは難しいの?成功した先に幸せがあると信じているけどそれほんと?間に合う?子供はものすごいスピードで育っているのに?

がんばって売上を上げるなんて簡単。それよりも家に帰って家族と向き合うのは、幸せなのはわかっているんだけど、なぜか「勇気」がいるんですよね。逆に幸せを選ぶと、仕事やお金などその他の問題は消えていく…、そんな時代が来たんです。たぶん…!

 

 

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